こえもうたう

いまからするのは、合唱団特急うたごえ81号さんと、合唱団ガイスマさんの練習体験会にお邪魔した、という話。

こちらには書いているように、いや書いてないかもしれないが、私は合唱をやってた。で、いまはやってない。うたを歌わずに、ふえの練習ばかりしている。

たまーにスポットで歌ったりしてるのだけど、「合唱団に所属する」ということを15年以上していない。合唱が嫌になってやめたわけでは全くなく、むしろ合唱のことはずっと好きであり続けてるんだけども、まあ聴き専でやってます。

じつは近日中にまた歌う機会があるもので、うたの練習をぼちぼち始めてる。ところが、まじでびっくりするほど声が出ない。こんなに声が出なかったこと、生きてきて初めてである。

前回きちんとステージに乗ったのは2021年。でも2年程度のブランクなんてどうってことない、そう思ってた。しかし振り返ってみると、この2年の間には体調を崩したりもして、なんというか「声を出す」機会自体が激減していた。さらには加齢による加速も感じざるを得ない。2年前もそれなりに「声が出ない」とは思ったが、今回は全然レベルが違う声の出なさである。響くとか響かないとか、高音が出るとか出ないとか、息が続くとか続かないとか、そんな話以前に、声が出ない。声帯が閉まらない。

声帯、使わないとこんなことになるのか…。合唱してる人、長く歌い続けたいなら歌い続けた方が、いやなんでも良いから声を出し続けた方がいいですよ…。

何はともあれ声を出さなければ。というところに、Twitter(Xのことです)見てたらたまたま目に入った合唱団の練習体験会のお誘い。これはと思って勢いで申し込んだ。しかも2件。もちろん練習体験会というのは多少なりとも入団を期待されてはいるので、ちょっと今は入団までは無理ですすみません〜と思いながら。

まあこういう開いた体験会は、その団体の知名度を広める意味合いもあったりすると思うので、せめてものお礼ということで、ここで大いに語らせていただきます。(という意図を込めた冒頭の宣言)

 

ひとつめは「合唱団特急うたごえ81号」というバーバーショップ専門団体。

www.youtube.com

バーバーショップ、というのはジャンル、というか形態を指す言葉で、基本的には男声による4声部の合唱。合唱する人(してた人)の端くれとしてバーバーショップがどういうものかは知ってる。が、そういえば歌ったことはない。男声合唱のレパートリーとしてバーバーショップの楽曲が扱われることはあるが、私は混声合唱しかやってこなかったので、全く交わることがなかった。

じゃあこの機会に体験すればいいじゃん!なにしろバーバーショップが「かっこいい音楽」であることは知ってるし、演奏動画なんかを見るにつけ「とりあえず楽しく声が出したい」という要件にも適っていそう。(みんな楽しそうに声を出してる。)タイミングも合って、申し込まない理由がない。

バーバーショップ自体、少人数で演奏することを基本としていることもあり、うたごえ81号さんのメンバーも少数精鋭。とはよく言ったもので、まずマジで全員歌が上手い。声が良い。途中、メンバーによるお手本演奏を聴かせていただいたのだけど、ほんと素敵。贅沢すぎる。練習体験会来てこんなに幸せな気分で帰ることになるとは。

そして自分はといえば、ぜんぜん声が出なくてがっかりして帰ることになるとは。でもまあ、今日のところはこんなもんでしょ、と思える程度には大人になったけどね!楽しかったのでヨシ。

練習の隙間の時間でご教授いただいた「バーバーショップってこんな音楽」、その中でもとても印象的だったのが「バーバーショップには楽譜があるけど、楽譜通りに歌うことは重要視されない。」という主旨のお話。言葉のニュアンスや、お互いの呼吸が、楽譜よりも優先されるべき。他の誰かの真似ではない、ここにいる仲間と作り上げる唯一無二の音楽。それがバーバーショップ。

まじか。さっき「バーバーショップがどういうものかは知ってる」とか言ってたが、なんも知らなかった。お手本演奏が胸に響く訳だよ。バーバーショップ観がまるっきり変わった体験であった。

 

ふたつめが「合唱団ガイスマ」こちらはラトビア専門合唱団。

koris-gaisma.com

…さっきのバーバーショップといい、「普通の合唱団」には行かんのか?うーん、たしかに、「普通の合唱団」(それがなんなのかよくわからないが)の体験会は行こうと思わないかも…。いやしかし、これには流石の私も「ラトビア専門??そんなんあるの??」とは思った。

しかし、ラトビア。名前とだいたいの場所(バルト三国なのでバルト海のとこ)以外ぜんぜん知らない。ラトビア語もまっっったくわからない。というほぼゼロスタートであり、つまりこれは歌云々以前にめちゃくちゃ勉強になるし面白いのでは?ということで申し込み。

こちらはまさに老若男女という感じのメンバー構成。いやーこういう雰囲気なんかすごい久しぶりでちょっと楽しい。私が生まれる前から(これは本当に)合唱やっているようなお兄様にラトビアについて教えていただ来ました。

ちなみに指揮者の佐藤拓さんは、私の推し合唱団である「vocalconsort initium」や「Salicus Kammerchor」のメンバーでもある方。少しですがお話できて大変ハッピーでした。ウォームアップのメニューもとても参考になりました。

ラトビア語は全く未知であった。もちろんヨーロッパの諸言語と似てる部分はあるのだけど、「"o"をuoと読む」とか「"e"は閉じる場合と開く場合があるが、いつ開くかは綴りからは判断できない、なんならラトビア人の中でも意見が割れる場合がある」とか、へえ〜の連発である。まあその辺を押さえれば読み方自体は難しくない、のだが、流石に歌に乗せると全然読めませんでした。おもしれえ〜。

練習した曲は、合唱曲としては初級と言っていいものだと思うし、とても耳馴染みの良いものなのだけど、ラトビアミリしらの私の耳にはどこかエキゾチックに感じなくもない、かな?これがラトビアの音楽、という何か特徴づけるものはあるのだろうか。

ところで、ラトビアの「歌の祭典」の話もすごかった。5年に一度開催されるお祭りで、16000人で5時間歌うらしい。観客が16000人集まるのではない。16000人が歌うのである。100人の団体が160組入れ替わり立ち替わり歌うフェスでもない。16000人が、同時に、ひとつのステージで、5時間歌い続けるんである。意味わかんない。狂気。

しかしラトビア人にとって歌は、そのアイデンティティと深く結びついているとも伺い、この「初級」の歌の奥にある歴史と文化の厚みに、不覚にも心を打たれたよね。

(とはいえ祭りが長すぎる、帰るのが大変、というクレームもあるらしい。そりゃそうだ。)

なおガイスマさん、歌の祭典に参加する国外団体の中でも唯一の外国人による合唱団(ほかは国外のラトビア人合唱団)という、超例外的合唱団らしい。日本ではラトビア大使館に呼ばれていって演奏したりもするそうで、ラトビア界隈ではかなりすごい合唱団である。

以上、結局ほんとに「勉強してきた」という印象が強い体験会。私ばっかりいただいてしまって申し訳ない。

 

どちらの合唱団も、3月にまた練習体験会をやるそうですので、少しでも興味を持たれた方は、ぜひご参加ください!この機会をお見逃しなく!(何様)