あ、カペラでいこう

たまーに、「この歌をアカペラにアレンジして歌いたい!」という気持ちが盛り上がることがある。

アカペラというのはあれです、日本ではゴスペラーズに代表される(?)「ひとり1パート、4〜6人くらいで基本的に無伴奏でポピュラー音楽を歌うやつ」です。(もしかしたら一般にはその説明は不要かもしれないが、古楽の「教会音楽」と「世俗曲」のように、分けないとわかりにくい文脈にいるので…)

私自身、過去にはアカペラを嗜んでみたりしたこともあり、歌を聴いては「これアカペラに合いそう」とかつい考えてしまう。好きな歌を、というよりは、「あっ、この曲のこの部分アカペラでやったら絶対かっこいい」みたいな動機が多い。まあ、好きでもない歌はやらないけど。

で、実際にちょこちょこと手を動かしては、アレンジしてみる。基本的にはPCの楽譜作成ソフトに向かって、原曲を繰り返し聴きながら耳コピする。メロディとベースラインを引いたら、リズムとハーモニーをはめていく。パートによる音域の中で、同じパートに負荷が偏らないよう、また歌いにくい音程を避けるなど考慮して、少しずつ形にしていく。歌い手も聴き手も飽きのこないよう全体の構成を調整したりもする。

のだけど、以上が完全に無目的。特に歌うアテもないので、ここまでやる必要性も全くない。アレンジすること自体が目的化している。

で、思い至ったんだが、アカペラアレンジをすることで満たされるいろいろな欲がある。だから歌うわけでもないのにアレンジしてしまう。ほんとうにアレンジすること自体が目的化しているのである。

まず、その音を分解する過程。基本的に耳コピでやってるので、歌はもちろん、コーラスもキーボードもギターもストリングスも可能な限り聞き取っていく。スコアを作るまではやらない(できない)けど、それでもこの作業を経ると、改めて聴いた時の解像度がすごい。私自身は好きな曲だったとしても楽曲をそこまで細かく聞くことはしないので、たまにこれをやるととっても楽しい。音楽に触ってる感じする。

そして、分解した音を組み立てる過程。上に書いたように、メロディーとハーモニーとリズムを、どうやって嵌めていけばカッコよく聞こえるかを試行錯誤して作っていく。隙間の処理とか逆にあぶれたパートの扱いとか、DIYやってる気分。

あと、絵描きさんによる「らくがき」に近いだろう感覚。つまり好きな作品を消費する意味合いもある。好きなアーティストの曲はもちろんだし、好きなアニメの主題歌とかね。私なりのファンアート。「らくがき」と言うには時間をかけ過ぎだが。

そして最後に忘れてはいけないのが、無目的に夜更かしをする欲である。そんなん別にアカペラアレンジしてなくても夜更かしするんだけど、Twitter見て時間を溶かすよりはだいぶ心穏やかに過ごすことができるので。

なんていうか、全体見渡すと、瞑想や祈りに似たものはあるかもしれない。(カペラに繋げたかったけどうまく繋がらなかっただけで特にこれ以上掘り下げるような話でもないのでこの辺で。)